2011/05/08

アーティスト・ファイル2011―現代の作家たち

今年も、アーティストファイル。

●松江泰治●

どこかで、きっと見たことがある。どこだったかは全く思い出せないのだけど。

町を眺める高台からの景色。展望台からの眺め。ずっとボンヤリと、手すりにでも寄りかかってみていたいシリーズ「CC」。
町ごとに景色が変わって飽きることがない。何かありそうだけど、別にこれといって特別なものはない。
私は、展望台でいつまでも景色を眺めていられる人だから、同じことが展示室の中で起きる。
意識的に何かを見ているわけではないのだけれど、なぜかその場から離れ難いのです。

望遠鏡を使って、視野を狭くして近づいて、気になるところを見ている気分になるシリーズ「cell」。
私は、普段から街を歩いているときも車に乗って車窓を眺めているときも、ちょっと気になるモノを見つけるとそれに見入ってしまう人だから、同じことが展示室の中で起きていることを嬉しく思う。

きっと作家自身も写真を振り返りながら、おお!こんな日常の一コマが写り込んでいたYO!って楽しくなったりしたのだろうな、なんて思います。(ご本人に会ったことはないので、あくまでもYO!のあたりは想像ですが。)

全体と部分の対になるような展示がとても納得させられるし、二部屋ある展示室の構成で、作家のやろうとしていることが自ずとみえてくるような展示でした。

地表を写しとったシリーズ「gazetteer」。
これを1作品だけ見たのだとしたら、そうでもなかったのだろうけど、ぐるりと複数で展示室を囲むように並べられると、視覚が麻痺するような感覚に陥りました。

画面に映し出された光景は、立体感や遠近感、スケール感もなく、ただただ美しいテクスチャの平べったい何か。強いて言えば、片目だけで景色を見ているような感じかもしれません。
そこに現れている被写体は、大地の荒々しさだったり、大自然の壮大なスケールだったりするのだけど、比較対象がよく分からないものだから、例えば岩なのか石ころなのかも、よくわからなかったりする。

強い太陽光線に思い切り焼き付けられた瞬間。均一の光の中の景色なんて、街で暮らす私たちにとっては非日常的なことなんだと思いました。目がくらむ。

何度目をこらしてみても、見えてこないものは、作家が削ぎ取ったもの。
街の景色にこれと言ったものが写っていないのも、大地に日常の視点がないのも、それは写してないから。
本当はそこにあるものを写さない、というのは、写真ならではの表現方法だなぁと思いました。


●ビョルン・メルフェス●

え、ショック!

実はこれが最初の感想です。《夜番 | ナイトウォッチ》のチラシになってるフクロウは、ただの毛むくじゃらのおじさんにしか見えなかった。作品のテイストは好きなのだけど、あの巨大なフクロウおじさんにはびっくりしました。作品のイメージ写真は、実際の作品ではないことを改めて思い知る。
音に合わせて光る箱。箱の森。部屋の中を耳を澄ませて彷徨いながら歩くこの作品は、舞台装置のようなインスタレーションで、ここでパフォーマンスをやったら面白い空間。

《マーフィ》は部屋にスピーカーを置かずにヘッドフォンだけの方が効果的なんじゃないのかな、とも思ったり。頭の中に流れ込んでくる音は、脳裏で映像を作り上げる。目の前の強い光が照明として脳の中の舞台に当たっているような感じです。

ちょっと前の現代アートという雰囲気があって、それが好きでした。


3月11日の地震のあとで、どれだけの見応えがあるのか、ないのか、そんなことを思いながら足を運んだけれど、相変わらずよかったです。
8人それぞれ、しっかり作り込まれていた。どんな作品でも美術館に置けばよく見えるわけではなく、高い天井、広い空間を我がものにできるだけの力のある作品がアートなんだろう。その空間に耐え得るものと空間に負けるもの。その差はどこにあるのか、まだ感覚でしかわからないのが、もどかしい。

ただ、前から思っていたことではあるけれど、どうしたって美術館での展示では、すでにある程度のキャリアを持つ作家ばかりで、安定志向(というのか?)がみえました。

マネの《草上の昼食》だったり、デュシャンの《泉》だったり、ああいう「スキャンダル」なことって、何でもアリな空気が流れている現代では出会うことができないのかもしれない。それはちょっと残念。

ただ、その安定志向を逆手にとって、元気のあるときはギャラリーを精力的に見て回って新しい感覚を探し、元気のないときは美術館で安心して見られるものを見て栄養を蓄える、といった使い分けができるな、とも思ったり。


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アーティスト・ファイル2011―現代の作家たち
@国立新美術館
2011年3月16日(水)→6月6日(月)
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今年は、ウェブサイトができてる!

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