2009/05/11

万華鏡の視覚

●クライマックスが、ない・・・●

『光、色、音、言語、概念、コミュニケーション。視覚だけでなく、聴覚や触覚など、人間のさまざまな感覚をあらゆる方向から刺激する作品と出会い、現代アートの醍醐味を体感してみませんか。本展は、優れた現代美術の所蔵で名高いティッセン・ボルネミッサ現代美術財団と森美術館が協働して、ダイナミックなインスタレーションを中心とした国際的に活躍するアーティストの作品で構成されます。』(展覧会HPより)


最初のギャラリーに入った瞬間に、眩しさにクラクラ。ホワイトキューブに煌々と光りそびえる蛍光灯の柱。
壁には別のネオンを使った作品があるものの、ネオンの光は弱く感じるくらいの明るさ。しばらく目がシパシパします。

ギャラリーに踏み込んだときのインパクトが強いので、その後にある、今回チラシにも使われているカールステン・フラーの《Y》の印象の弱いことといったら。作品の写真がとても印象的なので、拍子抜けしてしまいました。展覧会のタイトルの万華鏡をイメージするような作品でもあるのに、いいのかしら・・・

次のギャラリーにはジム・ランビーのしましまの床が広がり、ジョン・M・アームレーダーのミラーボールの幻想的な(第一印象は「飛蚊症」だったけれど)空間が続いています。

とにかく前半は、視覚から脳ミソが刺激されっぱなし。強い光、しましまの床、ゆらゆらのミラーボールにクラクラしっぱなし。真っ直ぐに歩いている自信が持てません。
一人で静かに鑑賞するのも悪くはないですが、誰かと一緒に「わ〜!」という感覚を分かち合いながら見る方が楽しいと思います。誰かがいればクラクラしていても安心です。

ジャネット・カーディフの暗い部屋《触ること》は私に反応しているのかしていないのか、いまいち掴めませんでしたが、ぐるっとスピーカーに取り囲まれる感覚はエルメスの展示の雰囲気と同じ。全方向から音が聞こえてくると、自分がどこに立っているのか不思議な感覚になります。
ただ、スピーカーに貼ってある蓄光テープと、部屋の隅に置いてある懐中電灯が非常にかっこ悪い。洗練された理想的な展示空間と、現実に安全を重視した展示空間が必ずしも一致しないのは残念なことです。ちょっとしたことで、作品をとりまく雰囲気はガラリと変わってしまうもの。善くも、悪くも、ね。


全体的に、今回の展示は作品の並びのテンポがいまいち。盛り上がりに欠ける、抑揚がないというのでしょうか。展覧会という場で作品を見せる上で、流れは大切な要素だと思います。
個々の作品は好きな作家も多かったし、とても良かったのだけど、ひとつひとつの作品がけっこうしっかりと存在感があるので、とくに前半は喧嘩しちゃってる感もありました。作品が良かっただけにもったいない。
『ダイナミックなインスタレーション』の「ダイナミックさ」が弱かったのが残念。作品数も多くないので、作品に合わせて贅沢に空間を使って展示してあればよかったのになと思います。


ここからは余談。
後半になるにつれて、だんだん締まりもなくなりつつ、最後は作品なのかよくわからない印象を与える映像の展示の仕方。あてつけのように椅子をずらーっと並べてシアターみたいになっているけど、すぐ後ろにはインフォコーナーの小部屋があって。最近このレイアウトが続いているけれど、ずるずる〜っと気がついたら終わっている感じ、嫌いです。曖昧な印象のこのスペースに展示される作品も気の毒だなと思います。
この不況の中、今までのように毎回レイアウトを変えるお金がない・・・そんな気もします。せっかくの広い空間を上手く使えていないような感じが否めません。作品に合わせて展覧会ごとに壁を建て変えていた、体力のあった頃の森美術館に戻ってきてほしいです。ギャラリーを出る前に歴代の展覧会のポスターが飾ってあるコーナーを眺めながら、そう思いました。「そこまでやるの?」と言うほどに息を吹き返して元気になってほしいです。


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万華鏡の視覚:ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団コレクションより
@森美術館
2009年7月5日(日)まで
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展覧会のHPのトップページの画像が入れ替わるのが万華鏡なイメージなのかも。

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