MOTアニュアル2011 世界の深さのはかり方

●6つのはかり●

6人の作家のグループ展。6人が6人ともに視点が違って、表現方法が違って、様々なものの見方を探ることができる展覧会だったと思います。それぞれ違った価値観が6つ。

できれば空いている時間に、ゆっくりマイペースに楽しんでほしい展示。

毎年思うけれど、やっぱりMOTアニュアルのテイストが好きな私です。


●はかり1 秘かな憧れ●

冨井大裕の作品は、私にとっては憧れの世界。これだけ同じものを集めて形作る、繰り返す、ひたすら感。スポンジを並べたり、鉛筆とクリップを繋げたり、ハンマーを規則正しく並べたり・・・。

彼は「ものの『能力』」を浮かび上がらせているのだというけれど、そういえば、誰かが悪戯でゼムクリップを繋げてチェーン状にしていたり、子供が輪ゴムを一箱繋げて満足していたり、そんなことを思い出したりもして。アートなんて高尚なもののように語られることもあるけれど、けっこうその辺に在るものに通じるもの。

圧巻は、壁一面に刺さった画鋲の群れ。キラキラ光ってとても綺麗で、まさか上履きの裏に刺さってたあの画鋲が、こんなにも美しくなれるものなんだ!と、なんだか嬉しくなりました。同時に、昔の記憶が蘇りました。図書室当番だった小5の時、カウンター内の天井に画鋲を埋め尽くそうとしていたこと。あれが完成していたら、こんなに綺麗だったのか・・・。

やってみたかったこと、が詰まった作家、冨井大裕。
個展開催中。
冨井大裕個展「色と形を並べる」 2011年3月4日(金)〜3月26日(土)@ラディウム-レントゲンヴェルケ


●はかり2 小さな気配●

桜の花びらが舞う、ちいさなコップの中に空が広がる、ひっそり月が満ち欠ける、木藤純子の空間は、静かでとても居心地が良い。

静かにひとり佇んでいると、桜の花びらがヒラヒラと舞い降りてきた。上を見上げると、桜の木。なんだかもう、展示室内だけではなくて、その外の空気も取り込んでいるような空間。

意識の距離感もだんだんと遠くまで伸びていって、作品の中からストーリーがテレパシーのように脳裏に浮かび上がったり、小さい頃の微かな記憶にうっすら気付いたり、かと思えばここ2〜3年の最近の記憶、それこそ昨日の出来事を思い返したりもして、体内にとても大きな時間の空間が、宇宙のように広がった。

時間を気にせず、のんびりリラックスをして、丁寧に部屋の中を散策してほしい、そんなインスタレーション。


●はかり3 モノクロの森の中●

振り返ってみるたび、表情の変わる画面。とても細かく緻密に描き込まれたモノクロの画面。そしてどこからともなく聞こえてくる音。

関根直子の描き出した空間の中を彷徨うように巡る。なんだか舞台のセットの中にいるような気分。

寄ってみると綿密な筆跡が、離れてみれば大きなウネリにみえ、その流れにのって次にすすむ。寄って退いて流れて、よってひいてながれて・・・。どこかそんなリズムに身体を乗せてみました。

その瞬間、瞬間の気持ちに応えてくれるような感じがして、何度でも展示室の中を巡れる作品。


●はかり4 空間に気付く●

白い部屋に、白い糸。目を凝らさないと作品が見えてこない。きっとその「目を凝らす」行為が、作品の一部なのだと思う。

池内晶子は『空間を人間の視覚と結びつけることを試みている』という。白い糸が視線を誘い、そこに壁があること、壁に囲まれた空間があること、重力がはたらいていて上下があること、を気付かせてくれる。

ベンチに座って蜘蛛の巣のような糸を眺めていると、たくさんの糸がふと目の前から消えて部屋だけがぽっかり残ったような、そんな感覚になりました。糸を見ようとすればするほど、焦点が合わず、ますますボヤけて見えてくる。そしてその分、床の板の目が遠近感を強調しているように感じ、遠くに消失点がみえました。

ただただ白い、自然光を採り入れた空間は、空の太陽と雲の気分次第で明るさを変え、時間の移り変わりと緩やかな明かりの変化の美しさをも感じました。なんとも心地の良い。


●はかり5 線が面になるまでの時間●

ボールペンで描いた真っ黒な面。一見、ベタッと塗ったように見える黒い面。よく見れば、一本一本の線が集まって面になっていることがみえる。

一体、何本のボールペンを使って、何時間をかけてこの面を描き出したのだろう?何を考え、何を思いながら作業しているのだろう?吸い込まれそうな黒い面に映る自分の姿を眺めながら、そんなことを考えました。

ボールペンひとつで、こんなにも圧倒的な作品がつくれるなんて。縦に裂かれたような大きな作品は、覆いかぶさってくるように口を広げていて、ちょっと怖かった。

そして、あのボールペンのインクの独特の匂いを求めて、クンクンしてみましたが、残念、油性のあの匂いはなし。
このあと、個展があります。
「成層圏」Stratosphere vol.1 椛田ちひろ 2011年4月2日(土)~5月7日(土)@gallery αM


●はかり6 テープの宇宙と音が測る時間●

指紋を聴くビデオ。レコード針がこそばゆくも可愛らしい。自分の指紋も聴けたらいいのになぁなんて思いながら先にすすむと、毛糸玉ならぬテープ玉がポコポコ浮かぶ、近未来的な雰囲気の八木良太の部屋が開けた。宇宙船のような、実験室のような。

「ボールを持つ時は白手袋をはめてください」の表示だけだけど、カサカサカサーーーと回るタイヤとヘッドにピンとくる。これはやらねば。指紋は聴けないけど、その分ここでテープ玉を聴く。ちょっとササクレているので白手袋が引っかかりそう。やっぱり実際に手にとって試せる作品は楽しい。

全ての玉を試していないけれど、ノイズのような、でもなんだか可愛らしいブツブツ音を鳴らしながら、ランニングマシンの上を走っているみたい。カセットテープには行き止まりがあるけれど、球体テープはエンドレスに音を出す。もうすこしじっくり実験していたら、玉の個性を把握できたかしら・・・。

最後に2階の映像をみながら、時間の基準について思いを馳せる。もっとゆっくり生きたいな、と。そのためには音を早回しにしたらいいのかしら?


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MOTアニュアル2011 Nearest Faraway|世界の深さのはかり方
@東京都現代美術館
2011年2月26日(土)→5月8日(日)
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