志水児王 Elements

ギャラリーの重たい引戸をヨッコラショと開けると、暗い部屋の中に緑色の光が走っている。

目の前で起きているのは、緑色のレーザー光線がプログラム通りに淡々とワイングラスに当てられ、ワイングラスに当たった光線は、反射して、また透過して、部屋の壁面へ散っていく、ということ。特別な仕掛けがあったりトリックがあるわけでもなく、ただ、光がオブジェクトに当てられている、だけ。とてもシンプルなこと。

でも、その部屋に散ったレーザー光線が作る像。これがシンプルじゃない。

グラスの形に沿って、揺れたり膨らんだり伸びたり縮んだり。波のように、風のように、煙のように模様を描き出す。見慣れた何の変哲もないワイングラスから、これだけの形態が浮かび上がるなんて。薄いガラスの中に、宇宙が隠れている。

なにかが蠢いているような気配、頭の中に聞こえてくるリズム、耳の奥で鳴り出す音。
首筋に息をふぅっと吹きかけられるように、ぞわぞわっとする。

少しずつ少しずつ変形し、ぱっとカーブが変わる。また徐々に緩んでいき、すっと締まる。無機質な光が無機質なガラスを通り、有機的に揺らぐ不思議。温度も触感もないものに包み込まれる、妙な心地よさ。

レーザーを当てている間だけ浮かび上がる、緑色のワイングラスの世界。
部屋の照明を点けレーザーのスイッチを切った瞬間に、ただのレーザー光源とただのワイングラスに戻る。
一瞬で切り替わる、その感覚が気持ちいい。奥に展示してある写真は、ずっと紙の上にあり続けるわけで、やはりインスタレーションで感じた気持ち良さまでは残せないものだと思った。


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志水児王 Elements
@MISA SHIN GALLERY
2012年3月16日(金)→4月28日(土)
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