大槻素子 ゆっくり動く



大槻さんの絵の具の色。
必ず白を混ぜているような色づかい。少し霞んだグレイッシュの不透明感。
瑞々しいイチゴも、爽やかなキウイも、青々と茂る木々の葉も。全ての色が、光の中に淡く透き通って消えていくことのないような色。

キラキラした感じや美しくクリアな感じはしない。だから「カワイイ!」となりそうなケーキのモチーフも、食傷気味な気分になる。なかなか消えていかない生クリームの山に埋もれて、もうお腹いっぱい。そんな感じ。
でもそれは胃もたれ感ではないんだよね。

誕生日に食べるケーキの定番、イチゴのショートケーキ。白いクリームに真っ赤なイチゴがのっているだけで主役の気分になるのは、小さい頃からの刷り込みなのかな。ロウソクの火を消せるのは自分だけ、その日1日はお姫様。ショートケーキってそういうイメージを持っている。
ぼやけた輪郭、うっすらとフィルターがかかったような質感は、今は遠くになったそんな記憶らしきものに辿り着く。らしきものというのは、私は私自身のショートケーキの記憶を思い出せないのと、だけど象徴的にショートケーキを知っているから。

風景もそう。子供の頃にドライブで行ったどこかの山道や、フラリと行ったことがあるような海。どれも具体的な記憶ではなくて、イメージの記憶。もしかしたら、写真でみた景色なのかもしれない。

重すぎず、軽すぎず、頭の片隅をワサワサしていくような感覚に包まれる。
無意識に自身の脳ミソの端っこを撫でるように、記憶を反芻する。
自然光が入る広いギャラリーをぐるりと取り囲む沢山の絵。気持ちいい空間。


電線シリーズ。街の景観を損ねるといって地中に埋められていく電線と電柱だけれど、あれってすごい。絡まりそうにみえるのに、ぐちゃっとしながら各家にくまなく伸びていく。もしくは家からニョロッと手を伸ばすように伸びているようにも見える。
あまり良いイメージを持たれていない(ように思う)電線だけど、実際にあれを見るときって、空が背景になる。手の届かないところにある電線とさらにもっと遠くの空の構成。私はその造形が好き。(ついでに言えば、地中に埋まるところの黄色いプラスチックのカバーが劣化して欠けているのも好き)

どこまでも繋がっていく電線を目で追いかけると止まらなくなるのだけど、2000枚も描いたというその執拗な感じは、私のそれと同じ感覚なのだろうか?私は同じような感覚で、たくさん並べられた電線シリーズをみたけれど。


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大槻素子 ゆっくり動く
@GALLERY SPEAK FOR
2012年3月30日(金)→4月11日(水)
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知り合いの展示について書くのは、まだなんだか気恥ずかしい...